拡大《レオポール・ルヴェールの肖像》

エドガー・ドガ

《レオポール・ルヴェールの肖像》

1874年頃  油彩・カンヴァス

ドガは、エコール・デ・ボザールでアングルの弟子ルイ・ラモートに学び、ルーヴル美術館での模写やおよそ3年に及ぶイタリア滞在を通じて、ルネサンス期の絵画研究に若き日の情熱を傾けました。1860年代以降は、近しい人々の肖像やパリの風俗を主題に描く中で、マネやのちの印象派の画家たちと交流を結ぶようになります。この作品で描かれているレオポール・ルヴェールは、軍服のデザイナーから出発した風景画家・版画家で、その転身にはドガの後押しがあったようです。この肖像が描かれた時期に始まる印象派展にも、ルヴェールは第1回展から第3回展、そして第5回展に出品しています。彼は、ドガの友人で同じく印象派展に出品を重ねた画家アンリ・ルアールと親しく、この作品が当初、ルアールの所蔵であった事実は、ドガを中心とする画家たちの繋がりを物語っています。ドガによるルヴェールの顔と頭部の描写は細やかで、アカデミックな技術の裏付けをうかがわせます。他方、胴体部を描き出す素早い筆致と簡略化された仕上げには、印象派らしい手法を見ることができます。装束の黒と背景を彩る白の組み合わせを主調としながら、おそらくパレットナイフを用いて頭部の周りに赤をあしらう筆さばきは軽やかで、親しい友人を前に気取りなく筆を振るうドガの様子がうかがえます。

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