踊り子とともに、ドガがパステルでしばしば描いたのが、室内で湯浴みする裸婦です。その多くでドガは、あたかも鍵穴からのぞくような視点をとり、日常の営みに没頭する裸婦を自然な姿でとらえました。浴槽の縁に腰を下ろした裸婦を斜め後ろから描く構図は、1880年代後半と1900年頃に繰り返し試みられており、この作品もその1点です。このいわば連作で、ドガは同一の下絵を転用しながら、身体表現や構図に変化をつけています。この作品では、グレーと黄、緑色の穏やかな調和が、身体の重みをも表す力強い描線を引き立てている点が特徴といえます。