拡大《腕を組んですわるサルタンバンク》

パブロ・ピカソ

《腕を組んですわるサルタンバンク》

1923年  油彩・カンヴァス

©2024 - Succession Pablo Picasso- BCF (JAPAN)

ピカソは、第一次大戦中に訪れたイタリアで古典古代の美術や文化に触れ、強いインスピレーションを受けました。結果として1918年から描かれる対象が、古代彫刻のような壮麗さを持つ新古典主義の時代に入りました。この作品はこの時期の終わり頃に制作されたものであり、いわば集大成としての完成度を持っています。
ここで描かれているのは、サルタンバンクと呼ばれる大道芸人です。イタリア語の「サルターレ・イン・バンク(椅子の上で飛び跳ねる人)」を語源とし、古くからフランスで使われてきた言葉です。彼らは、縁日などを渡り歩いて即興の芸を見せていました。
力強い黒い線、洗練されかつ迫力のある色彩のコントラスト、安定した構図の巧みさ、清潔感に溢れたサルタンバンクの表情などは、ギリシア・ローマ時代の古代彫刻に通じる造形美を持っています。ここでピカソは、芸人への憐憫の情を抱いて描いているようには見えません。むしろ芸人は、新しい時代を先導する英雄のごとき凜々しさを身にまとっています。そこには、伝統的な美を、自らが試行錯誤して洗練させた結果としての新しい手法で乗り越えようとする画家の意図が重ね合わされているようです。
この作品は、かつて20世紀を代表するピアニストで美術品の収集家としても知られていたウラジーミル・ホロヴィッツが所蔵しており、自宅の居間を飾っていたことが知られています。

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