生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎

2022年7月30日[土] - 10月16日[日]

概要

青木繁(1882-1911)と坂本繁二郎(1882-1969)は、ともに現在の福岡県久留米市に生まれ、同じ高等小学校で学び、同じ洋画塾で画家を志しました。日本の洋画が成熟へと向かう時代の流れのなかで、それぞれに独自の作風を探求しました。青木は東京美術学校(現東京藝術大学)在学中に画壇にデビューし、美術と文学において浪漫主義的風潮が高まる時代のなか、《海の幸》(1904年)で注目を集め、若くして評価されます。しかし、華々しいデビューとは対照的に、晩年は九州各地を放浪し、中央画壇への復帰も叶わず短い生涯を終えました。一方、坂本は青木に触発されて上京し、数年遅れてデビューします。パリ留学後は、福岡へ戻り、87歳で亡くなるまで長きにわたって、馬、静物、月などを題材にこつこつと制作に励み、静謐な世界観を築きました。作風も性格も全く異なる二人ではありますが、互いを意識して切磋琢磨していたことは確かでしょう。 生誕140年という記念すべき年に開催する本展は、約250点の作品で構成されます。二人の特徴や関係をよく表す作品を中心にすえ、それぞれの生涯をときに交差させながら「ふたつの旅」をひもといていきます。

青木繁
1882(明治15)年、福岡県久留米市生まれ。1903年、東京美術学校(現東京藝術大学)在学中に神話に取材した作品群で画壇デビュー。翌夏、青木は、友人の坂本、森田恒友、恋人の福田たねと房州の漁村(現千葉県館山市)に滞在し、友人たちの目にした大漁陸揚げの話に想像力をかき立てられ大作《海の幸》を制作しました。この作品はすぐれた構想力と大胆な表現法によって注目され、今日、日本近代美術史において、明治浪漫主義絵画を代表する作品として位置づけられています。1907年父親危篤に際して帰郷し、父が亡くなると、家族を扶養する問題に直面します。その解決策を見出せないまま九州各地を放浪し、中央画壇への復帰を画策しますが、その希望は叶うことなく、1911年、肺結核のため28歳で亡くなりました。

坂本繁二郎
1882年、福岡県久留米市生まれ。1902年、青木に誘われ上京、不同舎と太平洋画会研究所で学びました。青木が没すると、遺作展開催や画集編纂などその顕彰に尽くします。1912(大正元)年、文展出品作《うすれ日》(三菱一号館美術館寄託)が夏目漱石に評価され、1914年、二科展結成に加わりました。1924年、3年間のパリ留学を終えて郷里久留米へ戻った後、1931(昭和6)年、八女(やめ)市へ移り、没するまでその地で制作を続けました。人工的な要素の強いものを嫌い、自然のままの味わいを好んだ坂本は、身近な自然や静物に向き合い、淡い色彩と均質な描法によって対象を描き出します。1969年87歳の長寿を全うするまで、その静謐な作風で牛や馬、能面や月などを多く描きました。

展覧会風景

撮影:木奧惠三

開催概要

展覧会名

生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎

会期

2022年7月30日[土] - 10月16日[日]

前期

7月30日[土]- 9月11日[日]

後期

9月13日[火]- 10月16日[日]

開館時間

10:00ー18:00(9月23日を除く毎週金曜日は20:00まで) *入館は閉館の30分前まで

休館日

月曜日(9月19日、10月10日は開館)、9月20日、10月11日

主催

公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館

会場

6・5階 展示室

巡回

久留米市美術館 本館2階(会期:2022年10月29日[土]− 2023年1月22日[日])

同時開催

2022年7月20日[水]ー10月16日[日]
石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 田園、家族、都市(4階 展示室)

入館料 (税込)

ウェブ予約チケット 窓口販売チケット
一般 1,600 円 *クレジット決済のみ 1,800 円
大学生
専門学校生
高校生
無料 要予約
入館時に学生証か生徒手帳をご提示ください。
ウェブ予約をされない場合は「当日チケット」(一般)をご購入ください。
障がい者手帳をお持ちの方と
付き添いの方1名
無料 要予約
入館時に障がい者手帳をご提示ください。
中学生
以下の方
無料 予約不要
*ウェブ予約チケット:各入館時間枠の終了10分前まで販売。
*当日チケット:ウェブ予約チケットが完売していない場合のみ販売。
*予約枠には上限があります。
*この料金で同時開催の展覧会を全てご覧いただけます。

関連プログラム

学芸員によるギャラリートーク

2023年9月15日 [金] 「創造の現場」展について
時間:18:30-19:30   集合場所:5階展示室ロビー
担当:原 小百合
2023年10月6日 [金] 「創造の現場」展について
時間:15:30-16:30   集合場所:5階展示室ロビー
担当:田所 夏子
2023年10月20日 [金] 「ジャム・セッション 山口晃」展について
時間:18:30-19:30   集合場所:6階展示室ロビー
担当:平間 理香
2023年11月3日 [金] 「手の表情」
時間:15:30-16:30   集合場所:4階展示室ロビー
担当:細矢 芳
2023年11月17日 [金] 「出品中の石橋財団コレクションのハイライト」
時間:18:30-19:30   集合場所:4階展示室ロビー
担当:江藤 祐子
参加費・申込み不要
*入場券が必要です。
*混雑状況により、3階レクチャールームでの講座に変更になる場合、または中止する場合があります。

ARCレクチャー19 66年ぶりの「二人展」にみる青木繁と坂本繁二郎

2022年9月3日 [土] 66年ぶりの「二人展」にみる青木繁と坂本繁二郎
伊藤 絵里子(アーティゾン美術館学芸員)
アーティゾン美術館では、近代の洋画家、青木繁(1882-1911)と坂本繁二郎(1882-1969)の代表作が一堂に会する「生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎」展を開催しています。それぞれの回顧展は節目ごとに度々開催されてきましたが、二人の足跡をあわせて紹介するいわゆる「二人展」は66年ぶりの機会となります。二人が同郷の幼馴染みで、共に切磋琢磨した仲であったことは知られますが、二人の接点に焦点をあてることで、見えてくるそれぞれの特徴や、互いの存在と影響、さらには周囲の友人との間柄とそのネットワークというものをより浮き彫りにするのがこの展覧会のねらいです。修業時代から最晩年の絶筆作品まで、生涯と画業を俯瞰しつつ、二人の関係について展覧会の見どころを押さえながらご紹介します。

作品

坂本繁二郎《放牧三馬》1932年 油彩・カンヴァス

坂本繁二郎《放牧三馬》1932年 油彩・カンヴァス

青木繁《わだつみのいろこの宮》1907年 油彩・カンヴァス 重要文化財

青木繁《わだつみのいろこの宮》1907年 油彩・カンヴァス 重要文化財

青木繁《自画像》1903年 油彩・カンヴァス

青木繁《自画像》1903年 油彩・カンヴァス

青木繁《黄泉比良坂》1903年 色鉛筆、パステル、水彩・紙 東京藝術大学蔵 *後期のみ展示

青木繁《黄泉比良坂》1903年 色鉛筆、パステル、水彩・紙 東京藝術大学蔵 *後期のみ展示

青木繁《坂本繁二郎像》1902年 鉛筆、淡彩・紙、個人蔵 *前期のみ展示

青木繁《坂本繁二郎像》1902年 鉛筆、淡彩・紙、個人蔵 *前期のみ展示

青木繁《温泉》1910 年 油彩・カンヴァス 個人蔵

青木繁《温泉》1910 年 油彩・カンヴァス 個人蔵

青木繁《海の幸》1904年 油彩・カンヴァス 重要文化財

青木繁《海の幸》1904年 油彩・カンヴァス 重要文化財

青木繁《海》1904年 油彩・カンヴァス

青木繁《海》1904年 油彩・カンヴァス

坂本繁二郎《自画鏡像》1929年 油彩・紙

坂本繁二郎《自画鏡像》1929年 油彩・紙

坂本繁二郎《帽子を持てる女》1923年 油彩・カンヴァス

坂本繁二郎《帽子を持てる女》1923年 油彩・カンヴァス

坂本繁二郎《牛》1919-65年 油彩・カンヴァス 個人蔵

坂本繁二郎《牛》1919-65年 油彩・カンヴァス 個人蔵

坂本繁二郎《能面と鼓の胴》1962年 油彩・カンヴァス

坂本繁二郎《能面と鼓の胴》1962年 油彩・カンヴァス

坂本繁二郎《植木鉢》1959年 油彩・カンヴァス 久留米市美術館蔵

坂本繁二郎《植木鉢》1959年 油彩・カンヴァス 久留米市美術館蔵

坂本繁二郎《月》1966年 油彩・カンヴァス 無量寿院蔵(福岡県立美術館寄託)

坂本繁二郎《月》1966年 油彩・カンヴァス 無量寿院蔵(福岡県立美術館寄託)

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