拡大《サン=マメス六月の朝》

アルフレッド・シスレー

《サン=マメス六月の朝》

1884年   油彩・カンヴァス

印象派の風景画家シスレーは、1860年代にパリ南東約60km のところにあるフォンテーヌブローの森で写生を行いました。1870年代にはパリ西郊のルーヴシエンヌやアルジャントゥイユのセーヌ河畔で制作し、1880年以降はフォンテーヌブローの森の東側のロワン川流域に暮らしました。パリ近郊のセーヌ河畔は行楽や産業の場所として近代化されていましたが、ロワン川周辺にはまだ田園が残っていました。フォンテーヌブローの森の東のはずれに位置する小村サン= マメスは、セーヌ川とロワン川の合流点にあることから、フランス中部における河川交通や運輸の中心地として発達しました。この作品はサン= マメスの北側、セーヌ川沿いのラ・クロワ=ブランシュ通りのポプラ並木を描いたもの。左側をセーヌ川が流れており、水面には舟が浮かんでいます。川の左側に見えているのはセーヌ右岸の村ラ・セルの丘です。画面全体が穏やかな光で包まれていることの多いシスレーにしては珍しく、この作品では明暗の対比がなされ、それによって奥行きが強調されています。人々が行き交う並木道は、影で暗くなっています。青色で影が表現されていますが、これは印象派の作品の特徴のひとつです。印象派の画家たちは影の中にも色彩があることを指摘し、自らの作品でそのことを実践したのです。また、作品全体に筆あとを見ることができるのも、彼らの特徴です。

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