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ユニバーサル・ミュージアム プログラムVol.1 手話と声とスケッチのある鑑賞会「描くことは見ること」
ユニバーサル・ミュージアム(誰もが楽しめる美術館・博物館)プログラムを実施しました。このプログラムは、一人ひとり全部違う感覚を駆使して、ともに語らいながら、美術や美術館の魅力に触れることを目指しています。第1回となる今回は、企画段階より手話マップのご協力をいただき、「ジャム・セッション 山口晃」展(6階)とレクチャールーム(3階)を会場として実施。耳の聞こえない方・聞こえにくい方4人、聞こえる方4人、合計8人の皆さまをお迎えしました。
はじめに、耳の聞こえない人・聞こえにくい人と聞こえる人が一対一のペアになって座り、筆談をすることから始めました。模造紙に貼った作品画像の周囲に、カラーペンでお互いの感想を書き込んでいきます。その後、ペアで筆談したことを声や手話で教え合いました。
続いて、6階展示室入口に掲げられている山口晃さんのお手製パネル「スケッチOK」のメッセージを皆で一緒に確認。スケッチブックと鉛筆を持って6階へ向かい、自由に展示室を巡りながら時間内に一人一枚はスケッチをすることにしました。
鑑賞とスケッチを終えた皆さんのコメントより、その一部をご紹介します。
「最初の部屋に入って、びっくりしました/部屋全体が揺れているような不思議な感覚でした/だんだん気持ちが良くなって15分くらいいて、スケッチもしました」「《セザンヌの小径》を少し遠くから見ていると、右下の壁の間から女性の足元がのぞいていました。壁の向こうの女性が何を見ているのかも気になりながらスケッチしました」「反転して文字になる《さんさしおん》がおもしろくて描きました/私は、文字になっていない《さんさしおん》を描きました。自分も真似して何かやってみたいです」「絵を描く前の話がたくさん書かれていて、山口さんはとても遠回し、そして自分をいろいろ盛り込んで結論を出していくような印象を受けました。山口さんみたいに考えてみようと思い《テイル オブ トーキョー》を見ながら、自分なりの未来の東京を描きました」「《ランドルト環》が、とても素敵で好きでした。部屋に飾りたいです。」「雪舟《四季山水図》の前に立つと自分の影がガラスに映って、そこに行き交う人たちの影も映る。身体を移動させて自分の影の中に雪舟の絵を入れることで絵がよく見えてくる。まるで身体の中に雪舟の四季が入り込んでくるようでした。この光は何だろう?この影は何だろう?印象的な空間を描きました」などなど。
一人ひとりの鑑賞の奥行きや手応えが、手話や声、そしてスケッチを通して生き生きと語られました。美術館スタッフにとっても、展示作品や展示空間の新たな魅力に気づかされる印象深いひとときとなりました。
[アーティゾン美術館教育普及部学芸員K.H.]