土曜講座 地中海学会連続講演会Vol.2「蘇生する古代」 第4回「ルイ14世時代のヴェルサイユ宮殿と古代」

2022.11.02

地中海学会連続講演会Vol.2「蘇生する古代」(全4回)の第4回は、望月典子氏(慶應義塾大学 文学部人文社会学科 教授)をお迎えし、「ルイ14世時代のヴェルサイユ宮殿と古代」というテーマでご講演いただきました。

 

ルイ14世の親政が開始した1661年以降、ヴェルサイユ宮殿の増改築が本格化し、宮殿や庭園の装飾には、アポロを中心に古代神話の世界が華やかに展開しました。そこには、ヨーロッパの覇権を手に入れようとの野望を抱くフランスが、古代の神々や英雄たちをアレゴリー化し象徴的な記号として扱うことで、過去と現在、神話の時代と歴史とを密接に結びつけ、自らを古代ローマ帝国の正統な相続人であるとの連続性を作り出していく様相をみることができます。

 

本講座では、ヴェルサイユ宮殿の造営に伴って生み出されたさまざまなルイ14世の表象を追いながら、当初は、古代ローマ皇帝アウグストゥスやギリシアのアレキサンドロス大王、アポロに関連付けられていたものが、1678年のオランダ戦争終結以後の大増築である「鏡の間」の建設においては、もはや古代の神々や英雄に仮託するのではなく、自身の姿と戦功を表象させる「神格化」が見出せることを示していただきました。

 

「フランス古典主義」の時代に、古代への崇敬は根強くとも、その絶対的な価値が揺らいでいく様子をヴェルサイユ宮殿の装飾から読み解いていただくひとときとなりました。

[アーティゾン美術館教育普及部学芸員K.H.

土曜講座 地中海学会連続講演会Vol.2「蘇生する古代」 第4回「ルイ14世時代のヴェルサイユ宮殿と古代」
土曜講座 地中海学会連続講演会Vol.2「蘇生する古代」 第4回「ルイ14世時代のヴェルサイユ宮殿と古代」
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