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土曜講座 地中海学会連続講演会Vol.2「蘇生する古代」 第3回「よみがえるムーサたち−フェッラーラ、リミニ、ウルビーノ」
2022.10.19
地中海学会連続講演会Vol.2「蘇生する古代」(全4回)の第3回は、京谷啓徳氏(学習院大学文学部哲学科教授)をお迎えし、「よみがえるムーサたち−フェッラーラ、リミニ、ウルビーノ」というテーマでご講演いただきました。
ムーサたちとは、ゼウスと記憶の女神ムネモシュケの娘である9人姉妹のこと。彼女たちは、アポロン神に率いられてパルナッソス山に住み、詩人や音楽家など芸術家たちに霊感を与える存在とされます。この図像を描いた最も有名なものの一つとして、ヴァチカン宮殿の「署名の間」にあるラファエロの《パルナッソス》が知られています。
ラファエロの前史ともいえる15世紀。人文主義的教養を有する君主たちの間でムーサたちの図像が流行したことを、フェッラーラの君主レオネッロ・デステのストゥディオーロ(小書斎)に由来する8点を中心に、マントヴァ、リミニ、ウルビーノという宮廷都市に残された作例を通してご紹介いただきました。その中には、ラファエロの父でウルビーノの宮廷画家であったジョヴァンニ・サンティのムーサの連作も含まれます。古代ローマの石棺などを直接目にすることができたラファエロとは異なり、参照すべき古代ローマ人の手による具体的な手本を持たなかった画家たちは、どのようにその図像を表現(再生)したのか。画家たちのイメージソースとなったとされる二つの流れである、15世紀の書簡(グアリーノ・ダ・ヴェローナのレオネッロ・デステ宛書簡)や版画(マンテーニャのタロッキ)を参照しながら紐解いていただきました。
ミュージアムやミュージックの語源としても親しみを感じるムーサたち。その辿ってきた歴史に改めて触れるひとときとなりました。
[アーティゾン美術館教育普及部学芸員K.H.]