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土曜講座「マリー・ローランサンー時代をうつす眼」展(全2回) 第2回
1月27日に行われた土曜講座「マリー・ローランサン—時代をうつす眼」展(全2回)の第2回は、当館学芸員の賀川恭子(本展企画担当学芸員)が講師を務めました。
開催中の展覧会は、「序章:マリー・ローランサンと出会う」から始まり、ローランサンを辿る5つのテーマ「マリー・ローランサンとキュビスム」「マリー・ローランサンと文学」「マリー・ローランサンと人物画」「マリー・ローランサンと舞台芸術」「マリー・ローランサンと静物画」をめぐり、「終章:マリー・ローランサンと芸術」へと至る全7章で構成されています。展覧会を通して、改めてこの画家を知っていただき、ローランサンとはどのような画家だったのかを捉えていただくため、関連する同時代の画家たちの作品も一緒に並べて比較できるように展示されています。
本講座では、マリー・ローランサン(1883-1956)自身がその著書の中で、大画家として名前を挙げている4人。アンリ・マティス(1869-1954)、アンドレ・ドラン(1880-1954)、パブロ・ピカソ(1881-1973)、ジョルジュ・ブラック(1882-1963)を特に取り上げ、ローランサンとの比較を通して紹介されました。例えば、画塾アカデミー・アンベールで出会ったひとつ年上の画家であるブラックが、色彩や形態に新たな展開を推し進めたフォーヴィスムやキュビスムの作例や、バトー・ラヴォワール(洗濯船)のピカソのアトリエで撮影されたピカソ、ブラック、そしてローランサンの写真。洗濯船の常連であった数学者モーリス・プランセ(Maurice Princet)の妻アリス(後のドラン夫人)をモデルに、ドランそしてローランサンが描いた肖像画。ローランサンがスペインへの亡命を経て、再びパリに戻った後に注目を集めた肖像画《ピンクのコートを着たグールゴー男爵夫人の肖像》《黒いマンテラをかぶったグールゴー男爵夫人の肖像》とほぼ同時期に描かれたマティスによる《グールゴー男爵夫人の肖像》など。さらには、彼ら5人に共通するもう一つの接点バレエ・リュス。セルゲイ・ディアギレフ(1872-1929)が主宰したこのバレエ集団のために、画家たちは舞台装置や衣装をデザインし、音楽家たち、そして振付師やダンサーたちなど同時代の芸術家たちとも交流しました。
マリー・ローランサンが、2度の世界大戦があった厳しい時代の渦に巻き込まれながら、他の芸術家たちと出会い、自分のスタイルを作り出していった経過をたどりながら、目に見える明らかな影響関係だけではない作品制作の背景にあったであろう切磋琢磨する姿や、さまざまな考えに思いを馳せるひとときとなりました。(教育普及部学芸員 細矢 芳)