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土曜講座 地中海学会連続講演会Vol.3「動物の不思議」第2回
地中海学会連続講演会Vol.3「動物の不思議」(全3回)の第2回は、中西麻澄氏(東京藝術大学ほか講師)をお迎えし、「セレネの馬−ギリシア・ローマ神話と馬−」というテーマでご講演いただきました。
アーティゾン美術館所蔵のゴーガン《馬の頭部のある静物》には、「セレネの馬」(大英博物館所蔵)の模刻と思しき馬の頭部が描かれています。パルテノン神殿の東破風彫刻「女神アテナの誕生」の一部であるこの馬は、現在でも石膏デッサンを学ぶ機会のある方には、おなじみの彫刻として知られているようです。きっとゴーガンのように、この「セレネの馬」を描いたことのある方も多くいらっしゃることでしょう。
本講座では、パルテノン神殿の東破風において、月の女神セレネのビガ(二頭立て戦車)を引くこの馬の彫刻から始まり、1.神々の戦車(月神セレネの馬/馬と死)、2.空想の馬(ヒッポカンポス/ペガサス/ケンタウロス)、3.馬の神(馬の守り女神エポナ/馬の双子神ディオスクリ)、4.美術作品からみる「馬」。という4つのテーマに沿って、豊富な作例(古代のコインや陶器、モザイク、彫刻、凱旋門や石棺、噴水、壁画、絵画など)とともにご紹介いただきました。
他の動物たちとは比較にならないほど、古来より個別の馬の名前が多く残されていることや、古代美術とキリスト教美術では、馬に重ねるイメージに違いがあること、牛や羊、山羊、豚、鳥などと異なり犠牲獣にならなかったこと、などの特徴も教えていただきました。
講座の最後には、「トロイの木馬は、なぜ馬でなければならなかったのだろうか?」「彩色が施されていたというパルテノン神殿において、セレネの馬はいったい何色だったのだろうか?」という質問(不思議)も投げかけられ、ギリシア・ローマ神話に登場するさまざまな馬の魅力、そして不思議に思いを馳せるひとときとなりました。
[アーティゾン美術館教育普及部学芸員K.H.]