多様な色彩が織り重なり模糊とした背景に、人物と4本足の動物たちが幾何学的な線で描かれています。杖を手にした人物が、手前の4匹の動物から中ほどの動物を守るように立っています。そのポーズは、この作品が、新約聖書の「ヨハネによる福音書」に説かれた、狼に身をさらす「よき羊飼い」を踏まえていることを示しています。白い光をはらんだような背景は、場面の神秘的な効果を高めています。同じ年に先行して《砂漠の動物への説教》(ベルン、個人蔵)と題する素描が残されており、その後、油彩作品へと発展したことがうかがえます。