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パウル・クレー
《島》
1932年 油彩、砂を混ぜた石膏・板
ミュンヘンで絵画を学んだクレーは、カンディンスキーらによる芸術家グループ「青騎士」やダダ、シュルレアリスムと接触しながら、豊かな想像力を背景に独自の自然観に根ざした造形理論を育みました。1920年代からはバウハウス等で教鞭をとりながら、絶えず造形をめぐる思考と実験に取り組みました。この作品は、1931年にクレーが政治的な混乱を嫌ってバウハウスの職を辞し、デュッセルドルフの美術アカデミーに籍を置いていた時期に制作されたと考えられます。画面を均質に満たす点描は、モザイク文様とともに、1930–32年頃の作品に固有の特徴です。まず、一筆書きのような軌道で線が描かれ、いくつもの交差により生じたスペースが、それぞれ異なる色彩の点描の集合で彩られています。地の部分も随所に色彩を滲ませており、かすれた線の描く不定形のフォルム、細かな点描、質感と色彩の濃淡を帯びた地の部分とが、同一次元で絡み合い、あらゆる造形的要素が多様に響き合う画面が生まれています。この複雑で豊かな効果は、色彩をはじめ、点、線、面という要素の特質を知り抜いたクレーならではのもので、それらの戯れを通じて造形の無限の可能性を飽くことなく探ろうとする、画家の基本姿勢を物語っています。この作品は、1935年10–11月にバーゼルのクンスト・ハレで開催された大規模な回顧展の後、アメリカに渡り、バウハウスの同僚であった20世紀を代表する建築家ミース・ファン・デル・ローエに所蔵されていました。
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