芸術家を輩出する一族に生まれた堂本尚郎は、1952(昭和27)年、伯父の日本画家印象とともに初めてヨーロッパを旅行し、日本画から油彩画へ転向しました。1955年、27歳でパリに渡り、台頭しつつあったアンフォルメルの運動に身を投じました。第二次大戦後、力強く激しい抽象表現のうねりが世界各地に同時多発的に起きますが、アンフォルメルはその最も先鋭的な運動です。この作品は、この時期の堂本の作風を知るための典型作。内側から次々に湧き起こる動きが画面を這い回り、内と外、前と後の境をなくす渾沌とした空間が広がっています。