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拡大《運河風景》

松本竣介

《運河風景》

1943年   油彩・カンヴァス

松本竣介は1930年代から第二次大戦後にかけて、知的な操作による抒情豊かな風景画や人物画を数多く残しました。東西の古典美術を学習し、考え抜かれた静謐な画面を透明感のある描法でつくり出します。また妻禎子とともに月刊誌『雑記帳』を刊行し、様々な文章を意欲的に発表するなど、時代に翻弄されがちな画家のあるべき姿を世に問い続けました。
 1930年代初めからジョルジュ・ルオーやアメデオ・モディリアーニ、ゲオルゲ・グロスなどの影響を受けて、青や茶色のモンタージュ風の都市風景に取り組みますが、戦火が激しくなる1940年代には、東京や橫浜の気に入った風景を暗く静かな色調で繰り返し描きました。
 この作品は、東京の新橋近くのゴミ処理場とそこを流れる汐留川にかかる蓬莱橋だと考えられています。この堀り割りは1960年代に埋め立てられてしまいましたが、「蓬莱橋」は地名として今も残っています。運河風景は、この時期の松本が最も好んで取り上げた主題のひとつでした。橋桁や建物、電柱などによる水平線、垂直線の精緻な組み合わせが画面に奥行きを与え、戦争末期の重苦しい空気と社会の置かれた状況を、私たちへ雄弁に語りかけます。人間がほとんど描かれていませんが、まさしくこの時代の人間生活や、あるいは生命を表しているともいえるでしょう。この作品は1943(昭和18)年4月に、靉光、麻生三郎、寺田政明、井上長三郎らと結成した新人画会の第1回展で発表されました。
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《運河風景》