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ベルト・モリゾ
《バルコニーの女と子ども》
1872年 油彩・カンヴァス
モリゾは、印象派グループの数少ない女性の画家のひとりです。女性的な感受性で描かれる母子や子どもなどを主題とした作品は、男性の視点ではなかなか見ることのできない繊細さと穏健さを生み出しています。この作品は、モリゾの画歴において最も評価されたもののひとつです。パリの西部シャイヨー宮殿にほど近いバンジャマン・フランクリン通りにあった自邸が舞台となっています。着飾った女性と子どもがバルコニーから眼下に広がるパリの景観を見渡しています。トロカデロ庭園、セーヌ川、シャン・ド・マルス公園が描かれ、地平線の右側にはアンヴァリッドの金色のドームが見えます。素早く、活気のある筆づかいながら、細部までがきめ細やかに描かれています。これら背景が比較的粗く描かれているのに対し、右上の花瓶に生けられた赤い花や女性の瀟洒な衣装、子どもの青いリボンと衣装はていねいに仕上げられています。女性のモデルは姉のエドマかイヴとされています。子どものモデルは、イヴの娘で、ビシェットと呼ばれたポール・ゴビヤールであるかもしれません。モリゾは、制作当時マネと非常に近い間柄にあり、この頃は双方の画家の間の影響関係が指摘されており、この作品にもモダンな主題を革新的な技法で描いているところにマネの影響が垣間見えます。描かれた風景は、第二帝政時にセーヌ県知事オスマンが主導したパリ改造の結果をよく表しており、マネやカイユボットと同様に、モリゾは新しい都市パリの風景を印象派の技法でとらえています。
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