パウル・クレー
《庭の幻影》
1925年 油彩・木枠に貼られた厚紙
現実と抽象的フォルムとの間を絶えず行き来しつつ、色彩を中心に造形の可能性を探求した画家クレーのバウハウス時代の作品です。ほぼ等間隔で水平線の入った画面の全体に、線や点描など多様な筆致がちりばめられています。クレーはこの時期、自然や都市の風景を俯瞰的にとらえる上で、水平線で画面を秩序的に組織する手法をしばしばとりました。この作品では、中央に3本の樹木が象徴的に描かれているのに加え、植物の生える様を表した3本線の分岐したマークが随所に配され、太陽と思しき赤い円のもと、庭のイメージが浮かび上がります。周囲に暗示的に描かれた教会などの建物は、闇を思わせる茶褐色に溶け込み、昼とも夜ともつかぬ幻想性をもたらしています。
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