1955(昭和30)年に活動拠点を東京からニューヨークへ移し、国際的な抽象画家へと転身した猪熊弦一郎は、1964年以降、自らの拠点であるニューヨークのマンハッタンをモティーフに作品を制作するようになります。この作品はそういった都市シリーズのひとつで、鮮やかな単色の下地に平行線や幾何学的フォルムを用いて、ニューヨークの街が俯瞰図的に描かれています。細かい短線の羅列する構成は当時、絣や畳に形容され、日本的な美的感覚で斬新と評価されました。猪熊がとらえた都市の様相は、無意識のうちに日本的造形要素で表現されたのかもしれません。