独立美術協会で活躍した児島善三郎は、フランス留学中に学んだ写実的な骨格と量感表現に、伝統的な日本の装飾様式の融合を図る「日本人の油絵」の創造を追求しました。この作品では、海芋(カラー)と黄色の麒麟草を主とした初夏の花が描かれています。存在感のあるカラーの花や葉が立体的に描かれ、奥行きを感じさせるのに対し、文様の施された花瓶やテーブルクロス、背景の描写では平面性が強調されています。その巧みな組み合わせによって生み出された不安定感と、画面の外にまでつづくと想像される大きな装飾文様がこの作品に広がりを与えています。