家具職人の子として生まれ、ステンドグラス職人のもとで修業したルオーにとって、パリのセーヌ河畔や郊外は最も身近な風景でした。この作品の舞台は、画家が少年時代を過ごしたパリ19区の労働者地区ベルヴィルとされ、ルオー自身が「場末の町に貧しい親子を描いた」と語ったことが知られています。満月が照らし出す一本道にたたずむ3人の姿は、親子であると同時に、現代に生きるキリストと弟子たちの姿、あるいは目には見えなくてもキリストの存在が寄り添っている光景なのかもしれません。巧みな明暗表現によって、寂寥感が強調されています。