デッサンの名手マティスのそれは、アカデミックな描法とは一線を画し、モデルを前にしたときに画家の内面に湧き起こる感情を単純な線描に投射するものでした。この作品のモデルはジャッキーとして知られる孫娘ジャクリーヌ・マティス・モニエ(1931年生まれ)です。画家の愛する孫娘の愛らしい表情が、単純ながら勢いのある筆づかいで一気に描き上げられています。マティスはジャッキーをモデルに、これを含む太く黒い線描で描いたポートレートの連作を制作しています。それらの作品が貼られたアトリエで寛ぐマティスを写した写真が残されています。