フランスを代表する風景画家として知られるコローですが、1830年代から肖像画や人物画を制作し、1850年代以降は、現実にとらわれない、追想による人物画を手がけました。この作品では森の中で若い娘が微笑みかけています。けれども実際はアトリエで、プロのモデルにイタリアの農婦の装いをさせて描いたものです。若い頃にイタリアで描いた習作《たたずむイタリアの若い女》(1825–26年、個人蔵)を再び取り上げて、発展させたものと考えられます。青春を過ごしたイタリアの思い出と、彼が最晩年になって踏み込んだ叙情的世界とが表されています。